相続登記を自分でやる方法
2027年3月31日までにやること
最終更新:2026年9月26日
相続登記は、司法書士に頼まなくても自分でできます。2024年3月から戸籍が最寄りの市区町村でまとめて取れるようになり、いちばん面倒だった部分が大きく楽になりました。
ただし一か所、法務局が「登録免許税の計算誤りが増えています」と名指しで注意喚起している落とし穴があります。この記事では、そこを含めた6つの手順を順に説明します。
登録免許税の計算
固定資産税の納税通知書に載っている「価格」または「評価額」を入れてください。「課税標準額」ではありません。入力した内容はこの端末の中だけで計算しています。
まず、自分でやるか決める
| 自分でやりやすい | 司法書士に頼んだほうがいい |
|---|---|
|
・相続人が少なく、全員と連絡が取れる ・誰が相続するか決まっている ・不動産が1〜2件で、同じ市区町村にある ・平日に法務局へ行ける(郵送も可) |
・相続人が多い、疎遠、連絡が取れない人がいる ・名義が祖父のままなど、相続が2回以上たまっている ・不動産が複数の市区町村にまたがっている ・遺産分割でもめている ・相続放棄や相続人の廃除がからむ |
右側に当てはまるなら、自分でやろうとして何か月も止まるより、最初から頼んだほうが早くて安く済みます。報酬は事務所によって幅があります。日本司法書士会連合会が報酬アンケートの結果(2024年3月実施)を公開しているので、依頼前に目安を確認できます。
手順1
実家の不動産を特定する
まず、何を登記するのかを確定します。ここで私道や物置の底地が漏れることがよくあります。あとから見つかると、もう一度申請し直しになります。
| 固定資産税の納税通知書 | 毎年4〜6月に届きます。課税されていない私道は載っていないことがあります |
|---|---|
| 名寄帳(なよせちょう) | 市区町村で取れます。その市区町村にある、その人名義の不動産が全部載ります。漏れを防ぐならこちらです |
| 登記事項証明書 | 法務局で取ります。1通600円程度。地番・家屋番号・現在の名義人を確認します |
住所と地番は別物です。申請書には地番を書きます。登記事項証明書で確認してください。
手順2
戸籍を集める(2024年3月から楽になりました)
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍が必要です。結婚や転籍のたびに戸籍が変わっているので、数通〜十数通になります。
以前はこれを本籍地ごとに郵便で取り寄せる必要があり、何週間もかかりました。2024年3月1日から広域交付が始まり、最寄りの市区町村の窓口で、本籍地がどこであってもまとめて請求できるようになりました。
ただし制限があります。
| 請求できる人 | 本人、配偶者、父母・祖父母など(直系尊属)、子・孫など(直系卑属) |
|---|---|
| 請求できない | 兄弟姉妹の戸籍は対象外です |
| 方法 | 窓口のみ。郵送・代理人による請求はできません。顔写真付きの身分証明書が必要です |
| 取れないもの | コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍、一部事項証明書、個人事項証明書 |
親の相続なら、子であるあなたは直系卑属なので対象です。おじ・おばの相続だと兄弟姉妹の戸籍が必要になり、この制度は使えません。
手順3
法定相続情報一覧図をとる(無料)
集めた戸籍と一緒に申し出ると、法務局が認証文を付けた「法定相続情報一覧図の写し」を無料で交付してくれます。
これを取っておくと、戸籍の束を何度も出し直す必要がなくなります。登記だけでなく、銀行の解約、証券、年金の手続きでも使えます。必要な枚数だけもらっておくと、複数の銀行を同時に進められます。
申し出る法務局は、次の4つから選べます。
- 亡くなった人の本籍地
- 亡くなった人の最後の住所地
- 申し出る人の住所地
- 亡くなった人名義の不動産の所在地
自宅の近くで手続きできる、ということです。
手順4
遺産分割協議書をつくる
遺言書がなく、法定相続分とは違う分け方をする場合に必要です。相続人全員の実印を押し、全員の印鑑証明書を添えます。
不動産の表示は、登記事項証明書のとおりに正確に書きます。「実家」「自宅」では通りません。所在・地番・地目・地積を書き写してください。
きょうだい間の話し合いが進まない場合は、実家の片付けが進まない3つの理由と、きょうだいで決める手順も参考にしてください。
手順5
登録免許税を計算する
ここが、いちばん間違えるところです
法務局が「相続登記をご自身で手続きする方について、登録免許税の計算誤りが増えています」と注意喚起しています。
原因は、固定資産税の納税通知書に載っている「価格(評価額)」と「課税標準額」を取り違えることです。登録免許税に使うのは「価格(評価額)」のほうです。住宅用地は課税標準額が6分の1などに下がっているため、そちらを使うと税額が大幅に足りなくなり、補正を求められます。
計算の順番はこうです。
- 申請する土地・建物の評価額を合計する(持分がある場合は、先に持分をかける)
- 合計から1,000円未満を切り捨てる → これが課税価格
- 課税価格に0.4%(1000分の4)をかける
- 100円未満を切り捨てる → これが登録免許税
- 計算した額が1,000円未満なら、登録免許税は1,000円
法務局の例では、評価額の合計602,850円 → 課税価格602,000円 → 602,000×4/1000=2,408円 → 2,400円、となります。
土地が免税になる場合があります
次の2つは、令和9年(2027年)3月31日までの登記について登録免許税がかかりません。どちらも土地のみが対象で、建物は対象外です。
| 価額100万円以下の土地 | 評価額が100万円以下の土地は、相続による所有権移転登記が免税になります |
|---|---|
| 相続人が登記前に亡くなった場合 | 相続で土地を取得した人が、その登記をする前に亡くなったときの、その人への移転登記が免税になります |
1つ目は、田舎の小さな土地や私道でよく当てはまります。上の計算ツールは、土地の評価額が100万円以下なら自動で免税として計算します。
手順6
申請書を書いて提出する
申請書の様式と記載例は、法務局のサイトで公開されています。遺産分割によるもの、遺言によるもの、法定相続分によるものなど、ケース別のひな形があります。
提出先は、不動産の所在地を管轄する法務局です。住んでいる場所ではありません。実家が遠方なら、郵送でも申請できます。
| 窓口 | その場で形式的な確認をしてもらえるので、初めてなら安心です |
|---|---|
| 郵送 | 書留で送ります。返送用の封筒と切手を同封します |
| オンライン | 申請用総合ソフトが必要です。添付書類は別送になることが多く、初回はかえって手間がかかります |
登録免許税は収入印紙を申請書に貼って納めます(郵便局や法務局で買えます)。消印は押しません。
不備があると補正の連絡が来ます。直せば受け付けてもらえるので、落ち着いて対応してください。完了までの目安は1〜2週間です。
どうしても間に合わないときは「相続人申告登記」
遺産分割がまとまらないまま期限が迫ったときのための、簡易な手続きです。2024年4月に新設されました。
| 誰が | 相続人のうち1人が単独で申し出られます。連名でも可 |
|---|---|
| 効果 | 申し出た人については、相続登記の義務を果たしたとみなされます |
| 注意 | 申し出た人だけです。他の相続人の義務は消えません |
| 限界 | 権利関係を公示するものではありません。売る・担保に入れるには、別途きちんとした相続登記が必要です |
あくまで過料を避けるための応急処置です。実家を売るつもりなら、結局は本来の相続登記をすることになります。
期限のおさらい
| いつ相続したか | 期限 |
|---|---|
| 2024年4月1日以降 | 取得を知った日から3年以内 |
| 2024年3月31日以前(過去の相続すべて) | 2027年3月31日まで |
正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。金額は裁判所が決めます。
亡くなった日を入れるだけで他の手続きの期限もまとめて出したい場合は、相続手続きの期限一覧をご利用ください。
片付けと手続きを、きょうだいで
「実家じまいノート」は、実家の物を撮って「残す・もらう・売る・手放す」を分け、部屋ごとの片付け率と手続きの期限をまとめて管理できるiPhoneアプリです。担当とメモも残せます。無料で始められます。
App Storeで見るよくある質問
相続登記は本当に自分でできますか
相続人が少なく、誰が相続するか決まっていて、不動産が1〜2件なら十分できます。法務局が申請書の様式と記載例を公開しており、窓口で形式的な確認もしてもらえます。名義が祖父のままなど相続が重なっている場合は、司法書士に頼んだほうが早いです。
登録免許税は評価額と課税標準額のどちらで計算しますか
固定資産税の納税通知書に載っている「価格(評価額)」で計算します。「課税標準額」は住宅用地の軽減後の金額なので、こちらを使うと税額が足りなくなります。法務局も計算誤りが増えていると注意喚起しています。
戸籍は本籍地まで行かないと取れませんか
2024年3月1日から広域交付が始まり、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できます。ただし請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、兄弟姉妹の戸籍は取れません。郵送や代理人による請求もできません。
評価額100万円以下の土地は本当に無税ですか
令和9年(2027年)3月31日までの相続による所有権移転登記であれば、登録免許税はかかりません。土地のみが対象で、建物は対象外です。
遺産分割がまとまらないまま2027年3月31日を迎えそうです
相続人申告登記という簡易な手続きがあります。相続人のうち1人が単独で申し出られ、申し出た人については義務を果たしたとみなされます。ただし権利関係を公示するものではないため、売却や担保設定には別途相続登記が必要です。
出典
- 法務省|相続登記の申請義務化特設ページ
- 法務省|戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)
- 法務局|法定相続情報証明制度について
- 法務局|法定相続情報証明制度の具体的な手続について
- 法務局|相続登記の登録免許税の免税措置について
- 前橋地方法務局|登録免許税 計算のポイント(PDF)
- 法務局|不動産登記の申請書様式について
- 日本司法書士会連合会|報酬について(報酬アンケート結果)
このページの内容は、法務省・法務局が公開している情報をもとにした一般的な目安です。計算ツールの結果も概算であり、実際の税額は不動産の筆数・持分・免税措置の適用によって変わります。手数料は市区町村や請求方法によって異なります。個別の判断は、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。